Lesson5-3 砂糖の問題

「砂糖が体に良くないということは十分わかっているけれど、甘いものはやめられない!」
という女性は多いですね。アルコールやタバコは我慢できても、甘いものは我慢できないというケースも多いようです。
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しかし、砂糖は私たちにとって様々な良くない影響があることが分かってきています。どうして甘いものがやめられないのか、白い悪魔とも比喩される砂糖について、私たちはもっと知る必要があります。
 

 白くて甘い砂糖の真実

砂糖には様々なものがありますが、その中でも最も避けるべきは精製された白砂糖です。白い悪魔といわれる白砂糖は、私たちに様々な影響を及ぼします。

  1. 依存性が高い
  2. 免疫機能を低下させる
  3. 肥満や高血圧症、心臓病、糖尿病などの疾患の要因となる
  4. 血管を傷つける
  5. 精神面への悪影響がある
  6. 老化が早まる

①依存性が高い

プリンストン大学のBart Hoebel教授らは数年間にわたりラットを使った砂糖依存症の研究を行い、2008年12月に、砂糖の依存性を証明した研究結果が発表されました。
それによると、空腹時に砂糖を多量摂取するラットの脳内では、コカイン・モルヒネ・ニコチンなど依存性のある麻薬物質による変化と似た変化が起こったということです。空腹状態のラットが砂糖を摂取すると、脳内にドーパミンが放出され、このドーパミンによる快感が動機となり、砂糖が何度も欲しくなり依存が生じるのです。

甘い物は食べ始めると止まらない!?

上記はラットでの実験ですが、「甘い物は食べ始めると止まらない」という経験をした事がある人は多いのではないでしょうか。これは上記の依存性と共に、血糖値の急上昇が関係しています。
精製された白い砂糖の吸収は早く、口にするとあっという間に血糖値が急上昇します。血糖値が高い状態は体にとって危険なため、即座にインスリンが分泌され血糖値が下げられますが、このとき血糖値が下がりすぎてしまうと低血糖状態に陥ってしまいます。脳は糖を主な栄養素としているため危険を感じ、今度は糖分を摂取するように私たちに指令を出すのです。
これにより私たちはまた甘いものが食べたくなります。甘いものを食べだすと止まらないのは、私たちの意思が弱いからではなく、このような体の中でのホルモンの働きによるものなのです。
この血糖値の変化は「血糖値のジェットコースター」ともいわれ、これを繰り返すとインスリンの分泌異常や低血糖症、過食などの要因ともなります。
 

 ②免疫力を低下させる

白砂糖を摂取すると体の様々な機能が低下します。特に免疫機能は著しく低下すると指摘されています。
私たちの体には本来抵抗力・自然治癒力が備わっています。この抵抗力の根本にあるのが白血球であり、白血球には喰菌作用と免疫作用というおおまかな2つの働きがあります。白砂糖はこの2つに良くない影響を与えます。
喰菌作用とは、マクロファージと呼ばれる白血球が、体内に進入した細菌やウイルスを素早くキャッチして食べてくれる作用です。私達が持っている抵抗力の基本といえますが、白砂糖の過剰摂取によりこの喰菌作用が低下することがわかってきました。また免疫作用の側面からみても、リンパ球の抗体を作る働きはマクロファージと密接に相関していることからも、白砂糖は私たちの免疫力を低下させると言えるでしょう。白砂糖のとり過ぎは、それだけ様々な病気にかかりやすくなるともいえるのです。
実際に缶コーヒーを1本(含まれる砂糖は小さじ6杯分)を飲むと、飲用後5時間にわたって体のナチュラルキラー細胞(リンパ球の1つで、特にガン細胞拒絶に重要な役割を果たす細胞)の異物処理能力は25%低下するという報告があります。ちなみに同量の果物を食べても、「糖」の性質が違うためこのようなことはおきません。
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③肥満や高血圧症、心臓病、糖尿病などの疾患の要因となる

「砂糖は太りやすい」というイメージを多くの人がなんとなく持っているでしょう。確かにその通りなのですが、その理由を意識した事がある人は少ないでしょう。
Lesson4-2で中性脂肪について学習しましたが、砂糖は実は脂質よりも中性脂肪に変わりやすい性質を持っているのです。そのため脂肪細胞にも溜め込まれやすく、さらには様々な疾患の要因ともなります。

④血管を傷つける

砂糖を過剰に摂取すると、インスリンの分泌が間に合わなくなることがあります。フル回転した膵臓の機能が低下し血糖値を下げることができなくなると、高血糖の状態になります。
高血糖は分かりやすく言うと血液がドロドロとした状態であり、これにより血管が傷つきます。この血管ダメージはタバコを4本吸った影響に相当するとも言われています。

⑤精神面への悪影響

近年精神的な病やうつ病の増加が問題視されていますが、その要因としてストレスと合わせて白砂糖の影響が指摘されています。イギリスのジョン・ワトキンス博士は、「この世から白砂糖をなくしたら精神病はすべてなくなる」と断言しているほどです。
これは、白砂糖がホルモン分泌に影響を与えるためです。
①で、精製された砂糖を摂取すると血糖値の急上昇と急降下が起こると学習しましたが、血糖値を下げるホルモンとしてインスリンが、血糖値を上げるホルモンとしてアドレナリンが放出されます。アドレナリンは神経伝達物質の一つで、興奮すると大量に放出されるホルモンですが、アドレナリンが出すぎると、思考力が減退し、集中力がなくなったり、短気でキレやすくなったりします。
このように精神的に不安定な状態になる上に、血糖値が安定しないと、私たちが幸福感を感じて安心して毎日を過ごすためのホルモンであるセロトニンが安定して分泌されません。セロトニンが分泌されないと、睡眠に必要なホルモンであるメラトニンも分泌されなくなり、睡眠不足により精神的に不安定な状態が加速します。
このように、普段あまり意識することがない精神面への影響も大きいのです。
 

⑥老化が早まる

おそらく女性が最も気になる影響でしょう。白砂糖が老化を早める原因については糖化現象が近年注目を集めています。

糖化現象

糖化とはメイラード反応ともいわれますが、たんぱく質や脂肪などが糖と反応して変性する反応を指します。食事で取り込まれた糖のうち、エネルギー源として代謝できなかった糖が体内にあるたんぱく質と結びつき、糖化たんぱく質(AGE、または終末糖化産物)が生成されて、体内に蓄積する現象のことです。
この反応は女性が大好きなパンケーキをイメージすると分かりやすいでしょう。小麦粉(糖質)や砂糖と卵や牛乳などのたんぱく質が合わさり熱を加えることで、こんがりと茶色くこげていきますね。
私たちの体でも同様の事が起こります。糖化はいわば細胞がこげるような強いダメージを体に与えることで、強い毒性を持つAGEを創り出ます。それが体内に蓄積することで細胞がさらにダメージを受け、老化を進める原因となるのです。
美しいハリのある肌を保ちたい人にとって、糖化はもっとも避けるべき生体反応です。
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どのような砂糖を選べばよいのか

上記のような様々な影響に加え、白砂糖は高度に精製された食品なので、食物繊維やビタミン、ミネラルといった栄養素を含みません。栄養素が全くなく、ただカロリーだけの存在とも言えるでしょう。
ただこれだけ様々な影響を知っても、甘味を全く摂取しない食生活というのは現実的ではありません。ではどのような砂糖を選んだらよのでしょうか。
体に優しい甘味料としては下記のようなものがあります。

甘味料

  • はちみつ
  • メープルシロップ(100%ピュアなもの)
  • メープルシュガー
  • ココナッツシュガー
  • 米飴などの穀物飴(精製されて透明のものはダメ)
  • 未精製てんさい糖
  • 黒糖(黒砂糖)
  • 羅漢果
  • ヤーコンシロップ・・・など

甘味料として使用できるもの

  • ドライフルーツ(余計な加工をしていないもの)
  • 果物を煮詰めた砂糖不使用のジャム類
  • バナナなどの甘味の強いフルーツ・・・など

このような甘味料は血糖値の上昇が緩やかで体に負担がかからず、ビタミンやミネラルなども含むため代謝に必要な栄養素も備えています
白砂糖よりも価格は上がりますが、はちみつやメープルシロップは手に入りやすい甘味料ですし、現在ではココナッツシュガーやてん菜糖なども少しずつ流通量が増えています。
また、体に優しい食事法であるマクロビオティックやローフードでは積極的に取り入られている甘味料であり、今では優しい甘味料を使用したスイーツをお店で食することもできます。
 
精製された砂糖は既製の食品や加工食品、飲料など実に多くの食品中に大量に含まれています。食品表示をよく見て、過剰摂取しないように注意してください。
安い食品には、必ずその理由があります。安価なものは短期的には魅力的に見えますが、私たちのたった1つしかない体に与える影響を考えて長期的な目線を持ち、本当に良い物を選んでいきましょう。
 
■Lesson5-3 まとめ■

  • 砂糖は高い依存性を持ち、ラットの実験ではコカイン・モルヒネ・ニコチンなど依存性のある麻薬物質に匹敵するという研究もなされている。
  • 「甘い物は食べ始めると止まらない」のは依存性と共に、血糖値の急上昇が関係している。血糖値の急上昇により、インスリンが分泌されて血糖値が急降下すると、低血糖となりあらたに糖を摂取を求めるホルモンが分泌される。甘いものを食べだすと止まらないのは、私たちの意思が弱いからではなく、このような体の中でのホルモンの働きによるものである。これを繰り返すとインスリンの分泌異常や低血糖症、過食などの要因ともなる。
  • 砂糖の摂取は、白血球の喰菌作用と免疫作用の働きを低下させ免疫力を低下させる。また砂糖の摂取によりナチュラルキラー細胞の異物処理能力は25%低下するという報告もある。
  • 砂糖は脂質よりも中性脂肪に変わりやすい性質を持ち、肥満や高血圧症、心臓病、糖尿病などの疾患の要因となる。
  • 血糖値の急上昇と急降下が続くとインスリンの分泌が正常に行われず高血糖の状態になる。高血糖とは血液がドロドロとした状態であり、これにより血管が傷つく。
  • 砂糖は精神面にも影響を与える。血糖値を上げるホルモンとして放出されるアドレナリンは、多量に分泌されると思考力が減退し、集中力がなくなったり、短気でキレやすくなり、精神を不安定にする。
  • 血糖値が安定しないとセロトニンが安定して分泌されず、セロトニンが分泌されないと、睡眠に必要なホルモンであるメラトニンも分泌されなくなり、睡眠不足となり精神の不安さを加速させる。
  • 糖化現象とは、たんぱく質や脂肪などが糖と反応して変性する反応を指す。体内で糖化現象が起こると細胞がダメージを受け強い毒性を持つAGEが創り出され、それが蓄積することで老化を進める原因となる。
  • 体に優しい甘味料とは血糖値の上昇が緩やかで体に負担がかからず、ビタミンやミネラルなども含むため代謝に必要な栄養素も備えているものである。はちみつやメープルシロップ、てん菜糖やドライフルーツなどを利用することで、体に負担をかけすぎずに甘いものを楽しむこともできる。