Lesson4-2 脂質① 油の種類・効用と選び方

ジューシーな唐揚げやサクサクのフライ、たっぷりのバタートーストやスイーツなど、「油」を使った食品というのは子どもから大人まで多くの人に好まれる食品です。ハイカロリーなのはわかっているけど、なかなか止められないというのが本音という人もいるでしょう。
最近ではココナッツオイルやオリーブオイルのブームにより、オイルの質が見直され始めています。少し前まで健康な油とされた植物性油が実は健康的な側面だけでは無かった事実マーガリンやショートニングなどのトランス脂肪酸を含む油の危険性など、油に関する話題は尽きる事がありません。
ここでは、私たちの体に必須であるにも関わらず、様々な話題に取りあげられながらも、善し悪しが分かりづらい脂質についてしっかり学習していきましょう。
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脂肪酸

揚げ物に使用される食用油をはじめとする「脂質」は、ほとんどが中性脂肪です。中性脂肪は、図のようにグリセリンと、種類の異なる脂肪酸が3つ結合して構成されます。脂質の性質は、結びついている脂肪酸によって決まります。
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脂肪酸とは何か

脂肪酸は、一般的に脂肪または油と言われている物の構成要素であり、脂質に属します。色々な呼び方がありますが、事実上それらを区別する必要性はありません。
炭素の数と炭素同士の結びつきに「二重結合」と呼ばれる分子構造があるかどうかで「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」とに分けることができます。二重結合のないものは「飽和脂肪酸」二重結合があるものは「不飽和脂肪酸」と呼ばれ、不飽和脂肪酸はさらに二重結合の数によって分類され、一つのものを「一価不飽和脂肪酸」、二つ以上のものを「多価不飽和脂肪酸」と呼んでいます。
体内で合成できない、もしくは合成されたとしても必要量を満たすほどではないので、食物から摂取しなければならない脂肪酸を「必須脂肪酸」といい、必須脂肪酸は全て不飽和脂肪酸です。リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などがその代表です。
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飽和脂肪酸

上記で説明したように分子構造に二重結合のないものが飽和脂肪酸です。二重結合のない飽和脂肪酸は化学的に安定した性質を持っており、融点(溶ける温度)が高く室温では固体の状態で存在します。安定した性質により酸化しにくく劣化しにくいため、食品加工に多く用いられています。
飽和脂肪酸は肉や乳製品などに多く含まれており例えば牛サーロイン(脂身つき)肉のステーキ200gに約33g、ベーコン薄切り3枚(60g)に約9gの飽和脂肪酸が含まれています。
動物性の油脂について「健康によくない」イメージを持つ人が多くいます。実際、飽和脂肪酸を多く摂取すると血液の粘度が高まります。これは、飽和脂肪酸は凝固温度が高く、牛や豚などよりも体温の低い人の体に入ると固まりやすくなるため言われています。また、中性脂肪の割合が高くなり、LDL(悪玉)コレステロールを増加させるともいわれています。
脂質が「動脈硬化」の原因とされているのは、こうした性質によるものです。

ココナッツオイルも飽和脂肪酸!

飽和脂肪酸は健康によくないイメージが強い一方、海外セレブや人気モデルの発信から、その美容と健康効果で注目度が急激に高まったココナッツオイルも、実は飽和脂肪酸なのです。
飽和脂肪酸と言っても、バターやラードのようなものとは性質が異なります。バターやラードに多く含まれる「長鎖脂肪酸」は、中性脂肪やコレステロールを増加させる作用があり、エネルギーとして使用できず余った物は、体内の脂肪細胞に蓄積されます。そのため摂取しすぎると脂肪として体に溜まり、動脈硬化などに繋がる可能性が出てきます。
一方ココナッツオイルは長鎖脂肪酸ではなく、「中鎖脂肪酸」を多く含む油です。
鎖脂肪酸」は長鎖脂肪酸と比べて消化吸収が約4倍速く、体内で速やかに分解されてエネルギーとなり、体に蓄積されにくい性質を持ちます。
利用効率が良いココナッツオイルは、「飽和脂肪酸は体に悪い・太る」と言われている中、例外として扱われ、美容や健康、ダイエット、老化防止効果に優れているとして話題になっています。また、欧米ではアルツハイマー病の予防としても有用であるという研究もなされています

不飽和脂肪酸

飽和脂肪酸とは異なり、健康によいイメージを持つ人が多いのが不飽和脂肪酸です。
不飽和脂肪酸は、魚の油(いわし、さんま、さばなど)や植物油(オリーブ油、ゴマ油、シソ油、グレープシード油など)に多く含まれている脂質です。常温で固体になることはあまり無く体内でも液体で存在し、血中の中性脂肪やコレステロール値を調節する働きがあるといわれています。
不飽和脂肪酸は分子構造に二重結合があるもので、二重結合の数によって一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸とに分けられます。分類が少々複雑なので、改めて表を確認しながら学習していきましょう。
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 一価不飽和脂肪酸

オリーブオイルやサフラワーオイルに多く含まれている脂肪酸です。酸化しにくく、動脈硬化の予防効果が期待されています。特にオレイン酸は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を下げる働きがあります。

含有量が多い食品
サフラワーオイル、オリーブオイル、マカダミアナッツ、ヘーゼルナッツなど

多価不飽和脂肪酸

構造によってさらにn-3系(オメガ3系)脂肪酸とn-6系(オメガ6系)脂肪酸とに分けることができます。

 n-3系脂肪酸

魚油やエゴマ油、フラックスシードオイル(亜麻仁の種子の油)などに多く含まれています。α-リノレン酸、※ エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)の3種がよく知られています。血中のLDLコレステロールや中性脂肪を減らし、HDLコレステロールの値を上昇させます。
※EPAはイコサペンタエン酸(IPA)とも呼ぶ

含有量が多い食品

  • αリノレン酸・・・必須脂肪酸。シソ油、エゴマ油、菜種油、アマニ油、くるみなど
  • DHA・・・必須脂肪酸。あんこうのきも、くじら、まぐろの脂身、さば、うなぎなど
  • EPA・・・必須脂肪酸。あんこうのきも、くじら、さば、うなぎ、さけなど

 n-6系脂肪酸

植物油のほか肉や大豆などにも含まれています。リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸の3種が代表です。血中のコレステロール量を減少させる働きがあるといわれます。ですから、摂りすぎるとHDLコレステロール(善玉コレステロール)の値も下がります。

含有量が多い食品

  • リノール酸・・・必須脂肪酸。サフラワー油、ひまわり油、綿実油、大豆油、コーン油など
  • γリノレン酸・・・月見草の油や種子、母乳、からすみ、くじら、にしんなど
  • アラキドン酸・・・ぶたレバー、卵黄、からすみ、さわらなど

 

摂取すべき油とは?

ダイエットブームにより油を使用しない食事が流行したこともありましたが、油抜きダイエットの弊害は様々なところで聞かれます。健康に支障を来す他、肌の輝きや艶がなくなりカサカサとして、美しさとはほど遠い状態になってしまいます。
私たちの体に油は欠かせないものなのです。ではどんな油を摂取すればよいのでしょうか。
飽和脂肪酸よりも不飽和脂肪酸のほうが比較的体に優しい油と考えられています。しかし飽和脂肪酸であるココナッツオイルにもよい効能が多く、酸化しやすい多価不飽和脂肪酸は加熱調理には適さないため、どんな場合にも絶対に体にとって良いかというわけではありません
また多価不飽和脂肪酸の摂りすぎは、女性の場合月経困難症などを引き起こす可能性が指摘されています。一時は「体に良い」という触れ込みでヒットした油でも(たとえばリノール酸など)、摂りすぎると心筋梗塞や糖尿病、ガン、アレルギー等々、結局はなんらかの不調を引き起こすことが指摘されています。
脂質は、質の高いものを選ぶようにし、さらにその製造方法・調理法まで重視するようにしましょう。いくら体に良い油でも、加熱や時間の経過により酸化していたり、油の精製方法において体によくない薬剤が使用されているようでは意味がありません。
多価不飽和脂肪酸の油は特に酸化しやすいため、製造年月日の新しいもの、圧搾方法が低温圧搾やコールドプレスの表記があるもの、光酸化しないように瓶が濃い色のものを選ぶ様にし、開封したら出来るだけ早く生のまま加熱せずに使用するとよいでしょう。またバランスよく少量の使用に留めることも大切です。

■Lesson4-2 まとめ■

  •  食用油をはじめとする「脂質」のほとんどが中性脂肪であり、グリセリンと種類の異なる脂肪酸が3つ結合して構成されている。
  • 脂肪酸は、炭素の数と炭素同士の結びつきに「二重結合」があるかどうかで「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」とに分類される。二重結合のないものは「飽和脂肪酸」、二重結合があるものは「不飽和脂肪酸」と呼ばれる。
  • 不飽和脂肪酸は二重結合の数によってさらに分類され、一つのものが「一価不飽和脂肪酸」、二つ以上のものが「多価不飽和脂肪酸」である。
  • リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などの食物から摂取しなければならない脂肪酸を「必須脂肪酸」といい、必須脂肪酸は全て不飽和脂肪酸である。
  • 飽和脂肪酸は肉や乳製品などに多く含まれている。適量の摂取は問題ないが、摂取過剰となると中性脂肪の割合が高くなり、LDL(悪玉)コレステロールを増加させる。
  • バターやラードに多く含まれる「長鎖脂肪酸」はエネルギー効率が悪く、摂取しすぎると脂肪細胞に蓄積される。
  • 飽和脂肪酸は健康に良くないイメージを持つ人が多いが、美容と健康効果で注目度が急激に高まったココナッツオイルも飽和脂肪酸である。美容や健康、ダイエット、老化防止効果、アルツハイマー病の予防効果など、様々な有用性が研究されている。
  • ココナッツオイルは「中鎖脂肪酸」を多く含む。「中鎖脂肪酸」は長鎖脂肪酸と比べて消化吸収が約4倍速く、体内で速やかに分解されてエネルギーとなり、体に蓄積されにくい性質を持つ。
  • 不飽和脂肪酸は、魚の油(いわし、さんま、さばなど)や植物油(オリーブ油、ゴマ油、シソ油、グレープシード油など)に多く含まれている。常温で固体になることはあまり無く体内でも液体で存在し、血中の中性脂肪やコレステロール値を調節する働きがある。
  • 不飽和脂肪酸は分子構造に二重結合があり、二重結合の数によって一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸とに分けられる。
  •  一価不飽和脂肪酸・・・酸化しにくく、動脈硬化の予防効果が期待されている。特にオレイン酸は、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を下げる働きがある。サフラワーオイル、オリーブオイル、マカダミアナッツ、ヘーゼルナッツなどに多く含まれる。
  • 多価不飽和脂肪酸は構造によってさらにn-3系(オメガ3系)脂肪酸とn-6系(オメガ6系)脂肪酸とに分けられる。
  •  n-3系脂肪酸・・・α-リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)の3種が有名で、血中のLDLコレステロールや中性脂肪を減らし、HDLコレステロールの値を上昇させる。魚油やエゴマ油、フラックスシードオイル(亜麻仁の種子の油)などに多く含まれている。
  •  n-6系脂肪酸・・・リノール酸、γ-リノレン酸、アラキドン酸の3種など。血中のコレステロール量を減少させる働きがあるが、摂りすぎるとHDLコレステロールの値も下がる。植物油などのほか肉や大豆などにも含まれている。
  • 脂質は、質の高いものを選ぶようにし、さらにその製造方法・調理法まで重視するようにするとよい。多価不飽和脂肪酸の油は特に、製造年月日の新しいもの、圧搾方法が低温圧搾やコールドプレスの表記があるもの、光酸化しないように瓶が濃い色のものを選ぶ様にし、開封したら出来るだけ早く生のまま加熱せずに使用する。