「野菜や果物は体に良いからどんどん食べた方がいい! 」
ヘルシーブームに乗り、野菜のよいイメージがどんどん広がっています。しかしこれは正しくもあり、間違ってもいます。ここでは、野菜や果物とは切っても切れない関係にある農薬について学習していきましょう。ファスティングや復食でも多量に用いる野菜や果物の選択の基準となる、とても重要な部分です。
国産野菜は安全か
なんとなく安心感がある「国産」「○○県産」という表示ですが、実はそれらの表示は安全性の基準とはなりにくい現実があります。「日本は世界でもトップクラスに農薬を使用している国」と言われたら、意外に思う方もいらっしゃるでしょう。
日本はアメリカと比較して、耕地面積あたり約17倍もの農薬を使用しているというデータがあります。国全体の使用量は面積の大きな国には及びませんが、この耕作面積あたりの使用量で比較するととても高い数値なのです。
近年まで他を寄せ付けない数字で世界1位をキープし続けて来ましたが、韓国の数値が急上昇したために現在は2位となっています。しかし日本の農薬使用量が減ったわけではありません。また日本の畑は、耕地以外にも一般家庭や道路沿いにもあり、そこでも農薬は使用されている為、日本の使用量は過小評価されている可能性があるとも指摘されています。
なぜ農薬を使用するのか
日本では約4200種類もの農薬が登録されています。「農薬」と一言で言っても実は多くの種類があり、その分類の仕方も様々です。
農林水産省では、殺虫剤、殺菌剤、殺虫殺菌剤、除草剤、殺そ剤、植物成長調整剤、その他の7種類に分類し、殺ダニ剤、殺線虫剤は殺虫剤に、農薬肥料、殺虫・殺菌植調剤、忌避剤、誘引剤、展着剤は「その他」に含めています。
使用目的でおおまかに分類すると下記の4つとなり、それぞれ使用する目的も明確です。
- 殺菌剤・・・農作物に発生する病気から農作物を守る目的。
- 殺虫剤・・・害虫から農作物を守る目的。
- 除草剤・・・農作物の生育を悪くする雑草を防ぐ目的。
- 植物成長調整剤・・・植物の背丈を抑制したり,種なしぶどうを作る目的。
- 殺そ剤・・・ネズミなどを退治する目的。
農作物を作る機会がない場合、農薬を目にすることはほとんどありませんが、農薬と同じ成分が家庭用の殺虫剤として使われることもあり全く無関係のものではありません。
農薬は悪い印象ばかりが情報として発信されていますが、上記のように明確な目的の元に使用されているのも事実です。日本のように雨が多く高温多湿な気候は、病害虫や雑草が発生しやすい環境といえます。また、ハウス栽培などは旬に関係なく、病害虫の発生しやすい時期に収穫するため、農薬が必要になる場合があるのです。
農薬を使用する目的
使用する目的として下記のようなものがあげられます。
- 安定した収量を得るため
- 虫食いのない見栄えの良いものを作るため
- 労働力を軽減するため・・・など
これは作り手である農家視点の目的ですが、同時に私たち消費者や流通業者たちのニーズを満たすために他なりません。
「安定した収穫を得る」必要があるのは、安定した量を日本中に安定した価格で流通させるためです。もし農薬使用を一切禁止した場合、収穫量の現象により流通量が激減し、価格は一気に高騰するでしょう。消費者が困り、多くの人達が価格高騰を非難する様子は、想像に難くありませんね。
また「虫食いのない見栄えの良いものを作る」のも、消費者が求めていることです。少しでも色むらや虫食いがある作物は消費者が選ぼうとしません。そのため小売業者も仕入れようとしません。手に取ってもらえる作物を作るには、見栄えがよい、という基準が無意識であっても重要な要素となっています。
日光をよく浴びたその味は大変おいしくても、日焼けしたリンゴは商品価値がなくなってしまいます
「労働力を軽減する」ことも、少子高齢化社会で農家の平均年齢がどんどん上がり、さらに農業就労者が増えない現代で、作物を安定して流通させるために必要なことでしょう。
私たちは残留農薬の心配をしますが、それよりももっと多量で高濃度の農薬の危険性を身近に感じているのは、他でもない生産者の人々です。その証拠に、農薬被害を最も受けているのは農家の人々なのです。それにも関わらず、私たち消費者のニーズを満たすために使用せざるを得ない現実があります。
農薬批判をする前に、その事実を知り、自分たちの行動を考える必要があります。
■Lesson5-4 まとめ■
- 日本は世界でもトップクラスに農薬を使用している国と言われており、アメリカと比較して、耕地面積あたり約17倍もの農薬を使用しているというデータもある。
- 日本では約4200種類もの農薬が登録されており、農林水産省では農薬を、殺虫剤、殺菌剤、殺虫殺菌剤、除草剤、殺そ剤、植物成長調整剤、その他の7種類に分類している。
- 日本のように雨が多く高温多湿な気候は、病害虫や雑草が発生しやすい環境であり、ハウス栽培などは旬に関係なく、病害虫の発生しやすい時期に収穫するため、農薬が必要になる場合がある。悪い影響ばかりが報道されるが、必要に駆られ使用されているのも事実である。
- 農薬の使用は、消費者や小売り業者が、虫食いのない見栄えの良い野菜や果物の安定供給を望む限り使用せざるを得ない状況がある。