Lesson10-2 消化・排泄と体内器官②

炭水化物とたんぱく質が消化器官に負担をかける理由

それぞれの体内器官の働きを学習することで、消化についてより深く理解することができます。
炭水化物やたんぱく質を一緒に摂取すると、生で食べない限り、多くの場合完全に消化されないまま大腸へと運ばれてしまいます。すると、大腸内で未消化の炭水化物は発酵し、たんぱく質は腐敗を始めます。
これは、炭水化物やたんぱく質が加熱処理されることによって、酵素を失ってしまったことが一番の理由です。酵素が失われた食品は、多くの消化酵素を必要としますが、それでも完全に消化しきることは難しく、特に現代では食べる量も増えているため、消化が不十分なまま胃や腸内に溜まることになります。ご飯や小麦粉製品、動物性たんぱく質は一般的に加熱調理されたものがほとんどであり、そのために消化に負担がかかるのです。
また、炭水化物とたんぱく質では必要とする消化酵素や消化器官が異なることも、食べ合わせにより消化に負担がかかる理由の1つです。炭水化物は最初に口腔内で消化が始まりますが、胃ではたんぱく質の分解に時間がかかるため、両方の消化がある程度終わらない限りどちらも胃から先へは進めないのです。
消化が不十分なまま体内に食べ物が留まっている状況は、長時間真夏のような温度の部屋に食べ物を置いておくことと同じです。当然、腐敗や発酵を避けられません。
完全に分解されないまま大腸に到達した食べ物は、大腸の中の菌によって分解されていきますが、この時に毒性のある物質が発生し、大腸がんなどへのリスクを高めることになります。また腸内環境も悪化し、必要な栄養素を吸収できなくなる上に、体にとっての不要物は取り込みやすくなるという状態になります。
消化の事を考えると、炭水化物とたんぱく質(特に動物性)は一緒に食べないほうが望ましいと言えるでしょう。しかし、定食や丼ものや麺類など、多くの外食はこの組み合わせがほとんどです。
炭水化物やたんぱく質を摂取する際に消化に負担を掛けないようにするには、酵素や補酵素がたっぷりの新鮮な野菜と一緒に摂取するのがお勧めです。もしカスタマイズできるのであれば、パンやおにぎりのお伴にはたっぷりのサラダを、お肉やお魚のお供にはお米よりもたっぷりの生野菜や漬け物などを合わせてみましょう。

 

女性の大きな悩みの種「便秘」について

gpointstudio/Shutterstock.com

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大腸の話をする時にやはり避けて通れないのが「便秘」の話でしょう。
便は「食物残渣物」、つまり食べ物の残りカスですから、当然のことながらいつまでも体内にと留めておいてよいものではありません。排便は、随意機能(自分の意思で行える機能)と、不随意機能(自分の意思ではコントロールできない機能)とが、順調に働いてこそ行われる作業です。
たいていの場合、便意を催してトイレに行ったら、まず「うーん」とお腹に力をこめますね。自分でコントロールできることですから、これが「随意機能」です。それとは別に、直腸が収縮しないと便を押し出すことができません。ところが、直腸の収縮は自分で意のままに行うことはできません(不随意機能)ので、「がんばったけど、ダメだった!」という結果になることもあるわけです。
大腸は長さがおよそ1.5mもあり、盲腸→上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸→直腸というように細かく分けることができます。このうち、便が形作られるのがS状結腸のあたりといわれています。S状結腸に便が一定量溜まってくると「直腸反射」という便意が生じます。これが脳に伝わり、「排泄せよ」という指令が出されるのですが、私たちの意識のなかでは、この時「我慢」するか、「うーん」といきむかの選択を迫られます。ここで「いきむ」を選択すると、排泄の指令が直腸へも伝わり、直腸が収縮して便が排泄されるという仕組みになっています。ところが、この「排便指令」に逆らって我慢を続けていると、次第に便意を感じられなくなってしまい、便秘になるわけです。
先ほど、腸内の常在菌について少し触れましたが、腸内細菌は特に免疫という分野で大活躍をしてくれます。しかも蠕動運動も活性化させてくれる働きも有しています。ところが、先に述べたように腸内に澄む細菌の中には悪さをする悪玉菌もいます。腸の中のバランスが崩れてしまうとこの悪玉菌がはびこり、蠕動運動も低下して便秘につながってしまうのです。
体の中にあってはならないものがいつまでも滞っている、という状況があまり良くありません。そこで焦るあまりに「薬」に頼る方も多いのですが、頼りすぎて逆効果になるケースも珍しくありません。
体の機能が正常に機能しない場合、大きな病気が隠れていることもあるので素人判断をすべきではありませんが、まずは自分の体が持つ本来の力を使って、排便できるようにすることが大切です。私たちの体には、本来機能を回復させるための力を備えているのです。
 
■Lesson10-2 まとめ■

  • 炭水化物やたんぱく質を一緒に摂取すると消化に長い時間がかかる。これは炭水化物やたんぱく質の多くが加熱食品で酵素を失っている事により多くの消化酵素が必要になるという理由と、この2つは消化酵素や消化器官がことなり、一緒に食べると両方の消化がある程度進むまで次の段階に進むことができず、結局消化が不十分になってしまうという自体が起こるためである。
  • 炭水化物やたんぱく質を摂取する際に消化に負担を掛けないようにするには、酵素や補酵素がたっぷりの生の新鮮な野菜と一緒に摂取するのがお勧め。
  • 排便は、随意機能(自分の意思で行える機能)と、不随意機能(自分の意思ではコントロールできない機能)とが、順調に働いてこそ行われる作業である。
  • 大腸は長さがおよそ1.5mもあり、盲腸→上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸→直腸というように細かく分けられる。
  • 便秘の原因には、便意を我慢することで次第に反応しなくなるものや、腸内環境の悪化により悪玉菌が増え蠕動運動が鈍くなるものなど、様々な理由が考えられる。