Lesson10-1 消化・排泄と体内器官①

Lesson10では、消化と排泄を体内器官の機能と合わせて学習していきます。口から入った食べ物は、私たちの体内の様々な器官の働きにより消化・栄養吸収・排泄のルートを辿ります。
 

口腔

口の中には、唾液腺というものがあります。名前からもわかるように、「唾液」を分泌する器官です。
食べ物は、噛み砕くことによって唾液とよく混ざり、飲み込みやすくなります。また、唾液に含まれるデンプン分解酵素のアミラーゼにより、デンプンの約半分は唾液によりすでに口の中で分解作業が始まっています。ですからご飯をよく噛まないで飲み込むという行為は、口の中で半分は済ませておくべき仕事を胃に押し付けるようなものなのです。
また、噛む事により胃で食べ物を消化する準備が始まります。また脳内に刺激が伝わることにより、満腹中枢を刺激するホルモンが分泌されます。消化にとって、「よく噛んで食べる」ということが、消化を効率よく進めるためにはとても重要なのです。
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よく噛んで飲み込まれた食物は食道を通過して胃に運ばれ、胃の中では胃液(塩酸)とペプシンが待っています。ペプシンは消化酵素プロテアーゼの一種です。
食事をすると胃液が盛んに分泌されます。「パブロフの犬」の実験で有名ですが、実は、食事のことを考えたり、香りをかいだりするだけでも胃液は分泌されます。梅干やレモンの写真を見たり想像するだけでも唾液が出てきますが、あの現象と同じで、唾液だけではなく胃液も分泌されるのです。つまり「おいしそうなお料理を目で楽しみながらご飯を食べる」というのは、消化にとってもプラスに働きます。
このように胃液は「食べ物」に非常に敏感に反応します。ですから、頻繁に間食をするということは、胃に休憩を与えないということを意味します。消化には膨大なエネルギーが必要だということはすでに学習しているので、自分たちの体のためにも胃を休める時間を作ることは大切です。

十二指腸

胃で消化された食物は、まだまだ吸収できるような形ではありません。食物は引き続き消化のために十二指腸へ送られます。すると今度は十二指腸からすい臓へ命令が出されて、膵液が分泌されます。
実は、この膵液はデンプンも脂質もたんぱく質も、すべてを分解することができる優れものです。アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼという3種の酵素をすべてを含んでいます。また、同時に胆のう(肝臓で作られる胆汁を貯蔵してあるところ)に命令が出され、胆汁も分泌されます。胆汁には消化酵素が含まれていないのですが、脂肪を溶かしてくれるので脂肪の消化酵素であるリパーゼが作用しやすくなり、吸収が促進されます。
なお、胃酸により酸性になっていた食べ物は、ここでアルカリ性に変化します。

小腸

いよいよ最終段階の小腸へやってきます。小腸では、栄養素のほかに、水分や電解質の吸収も行われます。「柔毛」という突起状のひだがたくさんある小腸の表面積は、およそテニスコート1面分もの大きさがあり、狭い空間を実に効率よく使って本格的に栄養素の吸収が行われます。
この小腸で栄養素の吸収がほぼ終了し、あとは残りかす(残渣物 (ざんさぶつ))として大腸へ送られていくこととなります。

Designua/Shutterstock.com

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大腸

体の中はつねに一方通行です。ですから、食べ物は口から入ると、出口である肛門へ向かってただひたすら進みます。
チューブに入ったもの、たとえばハンドクリームなどを最後まで使おうとしたとき、お尻の部分からじっくりとしごいて、強く押し出すという動作をしますね。腸はそれと似たような動きをします。ミミズ(蠕虫(せんちゅう))が動く様子に似ているので、これを「蠕動(ぜんどう)運動」といいます。便を押し出すのは、この動きによるものです。
腸内には常在菌という細菌がおり、その働きによって大腸の中の食べ物が分解されます。発酵や腐敗が進むわけですが、便の臭いはこのために発生するにおいです。特に腐敗による臭いの発生は強く、肉類を多く食べると便が臭くなるのはこれが理由です。この細菌の中には、悪さをするものもいますが、私たちの体になくてはならない重要な働きをしてくれるものがほとんどです。
 
■Lesson10-1 まとめ■

  • 食べ物がまず最初に通る口腔内では、でんぷん質の消化を行うアミラーゼが分泌される。
  • 噛むことには、食べ物を細かくする以外にも、胃の消化の準備やホルモン分泌など様々な役割がある。
  • 胃の中では、胃液(塩酸)とペプシンが分泌されている。この胃液は食事のことを考えたり、香りをかいだりしただけでも分泌される。
  • 胃で消化された食べ物は引き続き消化のために十二指腸へ送られる。
  • 膵液はデンプンも脂質もたんぱく質も、すべてを分解することができ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼという3種の酵素をすべてを含んでいる。胆汁は消化酵素を含まないが、脂肪を溶かし脂肪の消化酵素であるリパーゼが作用しやすくなる。
  • 小腸では栄養素のほかに、水分や電解質の吸収も行われる。「柔毛」という突起状のひだがたくさんある小腸の表面積は、およそテニスコート1面分もある。
  • 大腸では「蠕動(ぜんどう)運動」が行われ便が排泄される。また、腸内には常在菌という細菌がおり、その働きによって大腸の中の食べ物が分解される。