Lesson9-5 代謝② 酵素の基本

酵素とは

私たちは、食べ物を「消化・吸収」し、吸収した物質から体に必要なエネルギーを生み出したり、新しい細胞を作ったりする「代謝」を行います。これは「酸化」という化学反応によって成し遂げられるもので、この化学反応には「触媒」が不可欠です。私たちの体の中で起こるこうした化学変化の「触媒」となっているのが「酵素」です。「酵素(エンザイム)」とはどのような物質なのでしょうか。
 

触媒としての「酵素」のはたらき

magnetix/Shutterstock.com

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  • Without catalyst : 触媒がないときの反応(酵素がない時の反応)
  • With catalyst : 触媒(酵素)があるときの反応
  • Ea : 総エネルギー
  • educts : 反応物質
  • Product : 生成物
  • Enzyme : 酵素

上側(Without catalyst)は酵素がないので、物質が別な物質(Product)になるためには、大きな山を越えなければならりません。したがって、そのためのエネルギーもたくさん消費することとなります。しかし、下側(With catalyst)は、物質が酵素と結びついているので、小さな山を越えるだけでよく、少ないエネルギーで別の物質になることができることを表しています。
酵素が触媒として存在していることで、様々な活動や反応が効率よく行われるようになります。
 

酵素の性質

性質①基質特異性

酵素にはたくさんの種類がありますが、「一つの酵素は一つの物質(基質)としか反応しない」という性質があります。ちょうど、部屋の鍵と鍵穴のような関係です。ですから、物質がたくさんあっても、それに対応できる酵素がなければ反応は起きません。
これは「基質特異性」といわれています。例えば「消化酵素」で考えてみると、肉を分解する酵素は肉だけを、魚を分解する酵素は魚だけを分解します。また肉といっても、牛なのか豚なのか鶏なのかで分解する酵素は異なり、自分が担当している物質以外の分解は決して行いません。これが「基質特異性」です。様々な種類のものを食べると、その数だけ酵素が必要となります。

性質②熱に弱い

また、酵素はタンパク質(アミノ酸)でできています。したがっ基本的に「熱に弱い」という性質があります。酵素が耐えうる温度は、40~70℃ぐらいといわれています。つまり、私たちの体と酵素の耐えうる温度はほぼ同じだということです。
ちなみに生の野菜や果物に含まれる食物酵素は47℃前後で変性が始まります。熱に強いと言われる発酵食品の酵素でも70℃ で変性してしまうため、加熱食には酵素がほぼ残っていない事になります。
また酵素には活動が活発になる温度というものもあり、私たちの体内にある酵素は、温度が低いと適切に働けなくなります。平熱が35℃台の低体温の女性が増えていますが、そのような体温では酵素の働きが鈍ることで様々な弊害が生じます。逆に36.5℃以上の体温があると、体内でも酵素の働きが活発となり免疫力や代謝が上がるなど様々なメリットがあります。
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酵素の種類

酵素には生の食べ物に含まれている「食物酵素」と私たちの体内に存在する「体内酵素」に大きく分けられます。また体内酵素には、消化を促進させる「消化酵素」と、代謝を促進させる「代謝酵素」があります。

消化酵素のはたらき

消化酵素とは、摂取した食品を体が吸収できる形にまで分解する働きをする酵素です。ファスティングでは、固形物を摂取せず消化器官を休めることで、この消化酵素を使用する割合を減らすことでデトックスを促していましたね。
すでに述べたように対応できる酵素は一つの物質に一つだけですから、さまざまな酵素が体内で働いています。分泌される場所も様々です。
酵素

代謝酵素のはたらき

美しく健康的な生活に欠かせないのが、こちらの代謝酵素の働きです。代謝酵素は「代謝」に関わる様々な働きをしますが、ファスティングでも重視していた細胞の入れ替えや老廃物の排泄などのデトックス作業を行っているのがこの代謝酵素なのです。
主な働きは以下のとおりです。

  • 吸収された栄養素からエネルギー(ATP)を産生
  • 新しい細胞(骨格や筋肉、皮膚や髪、抗体など)を作る
  • ホルモンを調整したり合成したりする
  • 解毒を行う(無害な物質に変化させる)
  • 神経の情報伝達にかかわる

美しく健康的な生活のためには、この消化酵素と代謝酵素を合わせた「体内酵素」をどのように使うかが重要となります。次ページで詳しく学習していきましょう。
 
■Lesson9-5 まとめ■

  • 食べ物を「消化・吸収」し、吸収した物質から体に必要なエネルギーを生み出したり、新しい細胞を作ったりする「代謝」を行っている。こうした化学変化の「触媒」となっているのが「酵素」である。
  • 酵素には基質特異性という性質がある。「一つの酵素は一つの物質(基質)としか反応しない」とう性質で、自分が担当する物質以外とは決して反応しないため、酵素には沢山の種類が存在する。
  • 酵素はアミノ酸であり、熱に弱いという性質を持つ。生の野菜や果物に含まれる食物酵素は47℃前後で変性が始まり、熱に強いと言われる発酵食品の酵素でも70℃ で変性してしてしまうため、加熱食には酵素がほぼ残っていない。
  • 酵素には食べ物に含まれている「食物酵素」と私たちの体内に存在する「体内酵素」に大きく分けられ、また体内酵素は消化を促進させる「消化酵素」と、代謝を促進させる「代謝酵素」に分けられる。
  • 消化酵素は、摂取した食品を体が吸収できる形にまで分解する働きをする酵素である。さまざまな酵素が体内で働いており、分泌される場所も様々である。
  • 代謝酵素には①吸収された栄養素からエネルギー(ATP)を産生、②新しい細胞(骨格や筋肉、皮膚や髪、抗体など)を作る、③ホルモンを調整したり合成したりする、④解毒を行う(無害な物質に変化させる)、④神経の情報伝達にかかわるなど重要な様々な働きがある。