Lesson9-4 代謝①分解・合成と触媒の働き

糖質・脂質・タンパク質といった栄養素を、体内で消費できる形に変化させる化学反応を「代謝」といいます。この化学反応は自然に進行するのではなく、「酵素」というたんぱく質の作用によって行われています。
「代謝」も「酵素」も、健康的で美しい体を維持するためには欠かせないキーワードです。本講座でもこれまでに何度も登場していますが、ここで改めてそのメカニズムや関連する働きについて学習して行きましょう。
 

代謝で重要なエネルギー源となるアデノシン3リン酸

私たちの体は、食べ物を分解、吸収してエネルギーを産生しています。このとき体内で作られ、利用されるエネルギー源の大部分は「アデノシン3リン酸」という物質です。アデノシン3リン酸は、「アデノシン(※)」という物質に、3つのリン酸の分子がつながったものなのですが、3番目と2番目のリン酸結合が「酵素」によって分解され、リン酸が切り離されるとエネルギーを放出します。
私たちの体は代謝として、このエネルギーを利用しているわけです。
※ アデノシン:アデニン(有機化合物)とd-リボース(糖)という物質が結合したもの。

Designua/Shutterstock.com

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【アデノシン3リン酸 Adenosine triphosphate(ATP)】
*Phosphate Groups 高エネルギーリン酸結合(リン酸基) *Riboseリボース
*Adenineアデニン      *Pは「リン酸」

 

「分解」と「合成」

摂取した食べ物を分解する際には「酸化」という化学反応が起きます。「酸化」とはモノを燃やすことと同じ反応です。もちろん、体の中に火がつくわけではなく、私たちの体では「モノを燃やす」ことと同じ化学反応がゆるやかに進んでいくのです。
食べ物のみならず、多くの物質は基本的に安定した状態にあるので、勝手に化学反応が始まるようなことはありません。化学的な変化を起こさせるためには、何らかの手助けが必要となります。この手助けをする物質を「触媒」といいます。この「触媒」があることによって、化学反応を加速させることができます。
 

触媒の働きと正体

代謝
例えば、ある物質(図中「反応物質」)が化学反応を起こして、別の物質(図中「生成物」)ができるとします。この物質の化学反応を加速させる「触媒」があれば、わずかなエネルギー(小さな山)でこの物質を活性化させて「生成物」を生み出すことができます。ところが、この「触媒」がない場合、反応させるために活性化させるためのエネルギーをより多く(大きな山)必要とします。
つまり「触媒」があれば、少ないエネルギーで化学反応を加速させることができるのです。これが「触媒」の働きです。そして、私たちの体の中で起こるこうした化学変化の「触媒」となっているのが、ファスティングでも重要なポジションとして学習してきた「酵素」なのです。
次からはこの酵素について詳しく見ていきましょう。
 
■Lesson9-4 まとめ■

  • 代謝とは、糖質・脂質・タンパク質といった栄養素を体内で消費できる形に変化させる化学反応をいう。
  • 摂取した食べ物を分解する際には「酸化」という化学反応がおき、私たちの体で「モノを燃やす」ことと同じ化学反応がゆるやかに進んでいく。
  • 食べ物を分解、合成するような化学反応には、手助けをする物質である「触媒」が必要となる。私たちの体の中で起こるこうした化学変化の「触媒」となるのが酵素である。