農薬の様々な現状や影響をしっかり学習してきました。自分自身の体や大切な家族の事を考えると、できるだけ安心な食材を手に入れたいと思い始めている方も多いでしょう。
農産物に関しては農薬の問題が取り上げられ始めてから、安心、安全な野菜として、「オーガニック」や「有機野菜」「無農薬」などという言葉をよく目にするようになりました。しかし、良く似た表示であるこれらを、単なるイメージで選んでいる方も多いようです。食品の表示には基準があります。こうした表示を正しく理解して、本当に安心できる食材を選びましょう。
有機野菜
種まき、または根付けする前の2年以上、多年作物は最初の収穫前3年以上は、化学肥料や農薬は使用せず、(堆肥などで)土づくりをした田畑において生産された農産物のことです。国が認定した登録認定機関によって「有機JAS認定」を取得したものに「有機野菜」という表示ができます。
よく似た表記に「有機栽培」「オーガニック」など、少々まぎらわしい表現のものもありますが、こちらの表記に対する規制はないため生産者の方を信じるしかありません。
「有機JASマーク」には認定獲得のために多額の費用がかかることで、必然的に野菜の価格も高くなります。また「有機JASマーク」認定基準の中には、使用してもよい農薬というものがあり、無農薬で作られているわけではないものもあることも覚えておく必要があります。
スーパーやデパートなど、栽培方法を作り手に直接質問することができない場合は、選択の基準として「有機JASマーク」はとても便利です。
無農薬野菜
残留農薬の影響が心配され始めたあたりからよく聞かれるようになったのが、この無農薬野菜というものです。
栽培期間中のみ農薬を使用せずに栽培された農産物のことを指している事が多いですが、明確な基準があるわけではありません。また農薬を使用しないのは栽培期間中のみであり、前の年に同じ畑で農薬を使って栽培していた場合には、畑に残留している農薬の心配があります。また農薬を使用しなければ化学肥料は使用してもよい、などとされる場合もあります。
この曖昧さに消費者が混乱したため、現在「無農薬野菜」として売り出すことは、農林水産省の特別栽培農産物に係る表示ガイドラインにおいてできなくなっています。
基準がないためわかりにくい点もありますが、生産を始めてから10年以上ずっと一度も農薬も肥料も使わず、無農薬・無化学肥料で栽培されている生産者の方がいるのも事実です。ファーマーズマーケットや対面販売などで「無農薬」という表示を見かけた際は、ぜひ生産者の方と話してみるのもよいでしょう。
減農薬野菜
この減農薬というのも基準が曖昧な表現であり、「周辺地域と比較して5割以上農薬を減らして栽培した野菜のこと」をさすことが多いです。「周辺と比較して」という非常に曖昧な定義であり、たくさんの農薬を使って生産している地域での「減農薬」であれば、あまり意味がありません。
農林水産省の特別栽培農産物に係る表示ガイドラインでは、
- その農産物が生産の原則に基づき、生産された地域の慣行水準に比べて、節減対象農薬の使用回数が5割以下、化学肥料の窒素成分量が5割以下で栽培された農産物・・・特別栽培農産物と一括表示をすること
- 農薬の不使用や節減について・・・「農薬:栽培期間中不使用」「節減対象農薬:○○地域比○割減」などといったより明確な表示を用いること
と定めています。
「減農薬」という言葉で安易に選ぶのではなく、その野菜は通常どれくらいの農薬が散布されているのか、そのうちどれくらい減らしているのかなどを知るとよいでしょう。例えばキャベツは通常20回以上農薬散布されることが多いので、10回散布しても「減農薬」となるのです。
安心野菜の選び方
スーパーなど栽培方法を質問することができない場合は「有機JASマーク」はとても便利です。しかし、上でも学習したように認定マークを取る事自体に費用がかかるため、認定マークをとらないけれどもしっかりとこだわったよい野菜を作っている生産者の方はたくさんいらっしゃいます。
直売所やファーマーズマーケットで購入する
近年様々なところで産地直売所やファーマーズマーケットが開催され、生産者の方と話しながら購入できる場所も増えています。このような所では、認定マーク表示にたよらずとも、実際の栽培方法を聞きながら、信頼できる生産者の方から愛情のこもった作物を購入することができます。
直売所やファーマーズマーケットのメリットは、旬の安心野菜をお手頃価格で手に入れられる事です。スーパーでは一年中同じ野菜がならび季節感を感じにくいですが、もっとも栄養価が高く美味しい旬野菜が並ぶファーマーズマーケットは訪れるだけでも楽しいでしょう。
また生産者の方と仲良くなることで、その素材の最も美味しい楽しみ方を教えてくれたり、新しい野菜の情報などを話してくれたりします。
作り手の顔が見える野菜というのは、本当に安心でき感謝して頂けるものです。
農地直送や有機野菜宅配を利用する
毎回買い出しに行くのは難しいという方は、野菜や果物などの産地直送便や有機野菜などをまとめて宅配してくれるサービスを利用すると便利でしょう。
健康ブームに乗り様々な宅配サービスが登場しています。契約農家から生産方法がわかる作物のみを扱っているところや、地方色豊かな食材をセレクトしてくれるところなど、お好みの会社を利用するとよいでしょう。サービスを選ぶ際は、HPや実際の購入者の口コミなどを参考に、本当に信頼できるところを探してみてください。
初回サービスプランを用意しているところが多いので、気軽に注文することもできます。
どれだけ農薬や野菜についての知識を持っていても、その知識を実際の選択に活用しなければ何もも変わりません。毎日の少しずつの選択があなたの体をつくり、健康をつくります。自分や家族のために、しっかりと選ぶ力と実行力を身につけましょう。
■Lesson5-6 まとめ■
- 有機野菜とは、種まき、または根付けする前の2年以上、多年作物は最初の収穫前3年以上は、化学肥料や農薬は使用せず、(堆肥などで)土づくりをした田畑において生産された農産物のこと。国が認定した登録認定機関によって「有機JAS認定」を取得したものに「有機野菜」という表示ができる。
- 「有機栽培」「オーガニック」少々まぎらわしい表現もあるが、こちらの表記に対する規制はない。
- 「有機JASマーク」には認定獲得のために多額の費用がかかることで、必然的に野菜の価格も高くなる。また認定基準のなかに使用しても良い農薬が含まれているため、無農薬で作られているわけではないものもある。
- 無農薬野菜とは、栽培期間中のみ農薬を使用せずに栽培された農産物のことを指している事が多いが、明確な基準はない。現在は「無農薬野菜」として売り出すことは、農林水産省の特別栽培農産物に係る表示ガイドラインにおいてできなくなっている。
- 減農薬野菜とは、「周辺地域と比較して5割以上農薬を減らして栽培した野菜のこと」をさすことが多いく、相対比較なので非常に曖昧な定義である。
- 農林水産省の特別栽培農産物に係る表示ガイドラインでは、その農産物が生産の原則に基づき、生産された地域の慣行水準に比べて、節減対象農薬の使用回数が5割以下、化学肥料の窒素成分量が5割以下で栽培された農産物を特別栽培農産物と一括表示をすること、農薬の不使用や節減について「農薬:栽培期間中不使用」「節減対象農薬:○○地域比○割減」などといったより明確な表示を用いることと定めている。
- 安心な食材を選ぶためには、確かな認定機関の表示を基準とする、ファーマーズマーケットなど生産者の顔が見える場所で購入する、有機野菜の宅配サービスを利用するなど、現代では様々な方法がある。