Lesson4-1 たんぱく質とアミノ酸

私たちの体と栄養素、それらを巡る問題について

ここまでは排泄と消化という体の機能や生体リズムついて学習してきました。Lesson4のテーマは私達の体と栄養素について、またそれらを巡る問題点について知識を深めることです。ここからは私達が生きるために必要な栄養素について学習していきましょう。
世の中は様々な食べ物で溢れていますが、吸収される段階で主要栄養素の「糖質」「脂質」「アミノ酸」になります。私たちはこれらを食品から摂取し、吸収できる形にまで分解(消化)してから、体に吸収します。
こうした食品の中で最も消化にエネルギーを要するのは「たんぱく質」です。
 

たんぱく質とは

たんぱく質は、肉や魚、卵や乳製品などが該当します。たんぱく質は私たちの体にとって大切なものですが、そのアミノ酸結合構造が非常に複雑なため、食品として摂取した場合には吸収と利用のプロセスも複雑になり、時間がかかるという特徴があります。
食べ物は口をスタートとして肛門までの長い消化管の旅をします。炭水化物などはおよそ25~30時間でこの旅を終えますが、たんぱく質の場合はその倍の時間を要します(一緒に食べる食品の組み合わせや量、その人の消化力によっても変化します)。つまり、たんぱく質を摂取すればするほど消化作業に負担がかかり、排泄などその他の機能に使えるエネルギーが減ってしまうのです。
 

たんぱく質の摂取基準

私達の体はたんぱく質でできているため、その合成に必要なアミノ酸は不可欠です。便や尿、髪や皮膚、発汗などにより体内の不要なたんぱく質を排泄して失っていますが、この量は1日にわずかに20g前後とされています。これに加えて、性別や年齢、成長度合いや求める体格により、必要なたんぱく質量は変わります。
また、体型や生活レベルに合わせて必要量を算出する方法もあります。

普通体型・日常的に運動レベルがあまり高くない
自分の体重×1.08g  (例:体重70kg×1.08=1日に必要な目安:75.6g)
(※痩せすぎが気になる方は、目標体重で計算して下さい。)
比較的筋肉質、又は、日常的に運動で身体を動かす習慣がある方
自分の体重×1.2~1.3g (例:体重70kg×1.3=1日に必要な目安91g)
筋肉質体系・激しい運動や筋肉トレーニングをしている方
自分の体重×1.5~2g  (例:体重70kg×1.7=1日に必要な目安119g)
※算出方法には他の計算もあります

ほとんどの人が毎日肉や魚を口にしている今日、たんぱく質が不足する心配するほぼありません。むしろ摂取過剰が指摘されています。
 

たんぱく質は最重要な栄養素?

日本に限らず、たんぱく質こそ「最高の、そして最重要な栄養素である」という認識があります。病人には「まずたんぱく質」、頑強な体を作るためにも「まずたんぱく質」という価値観は、世界共通にあるようです。
しかし、病気で体が弱っている人に、力を付けさせようとして牛乳や卵、肉、魚といったものを勧めたのは、十分に食べることが難しかった時代、もしくは今でもそうした状況に置かれている地域の話です。先進国はむしろたんぱく質を摂取しすぎている傾向にあり、それによる弊害のほうが多くなってきています。
私達の体はたんぱく質でできていますが、たんぱく質から作られるのではありません。体のたんぱく質は、肉や魚などの摂取したたんぱく質がそのまま細胞に利用されるのではなく、そのたんぱく質を時間をかけて分解したアミノ酸や食品に含まれるアミノ酸から合成されます。
アミノ酸の中には、私達の体内で合成可能なものと不可能なものがあり、不可能なものを「必須アミノ酸」といいます。必須アミノ酸は食品から摂取する必要があるわけですが、肉や魚だけでなく植物から摂取することができます。そのため無理に肉や魚を食べる必要はありません。ベジタリアン(菜食主義者 ※)と言われる人たちが、健康に過ごすことができているのは、その証拠といえます。
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私たちの体を構成するたんぱく質は重要な構成要素ですが、それを構成するために必要なのは、動物性たんぱく質一択ではないこと、現代ではたんぱく質の過剰摂取の傾向があり、それによって様々な弊害が出てきていることを覚えておきましょう。
 
■Lesson4-1 まとめ■

  • たんぱく質は私たちの体にとって大切なものだが、そのアミノ酸結合構造が非常に複雑なため、食品として摂取した場合には吸収と利用のプロセスも複雑になり消化吸収に時間がかかるという特徴を持つ。
  • たんぱく質は排泄までに50〜60時間という長い時間を必要とする。たんぱく質を摂取すればするほど消化に負担がかかり、排泄などその他の機能に使えるエネルギーが減ってしまう。
  • 便や尿、髪や皮膚、発汗などにより体内の不要なたんぱく質を排泄して失っており、この量は1日に20g前後とされている。
  • たんぱく質は栄養素として世界的に高く評価されているが、病気の人にたんぱく質食品を勧めたのは食に乏しかった時代、もしくは現代でも食料難がある地域での話であり、先進国はむしろたんぱく質の摂取過多が指摘されている。
  • 私達の体のたんぱく質は、摂取したたんぱく質を時間をかけて分解したアミノ酸や食品に含まれるアミノ酸から合成される。
  • 私たちの体内で合成不可能なアミノ酸は「必須アミノ酸」といわれ食品から摂取する必要があるが、これは動物性たんぱく質だけでなく植物性のものからも摂取可能である。
  • たんぱく質は重要な構成要素だが、その構成に必要なのは動物性たんぱく質一択ではないこと、現代ではたんぱく質の過剰摂取の傾向があり、それによって様々な弊害が出ていることを覚えておくとよい。

 
※ ベジタリアン(菜食主義者) 健康上、信条等の理由から、動物性食品を避け、植物性食品だけを食べる人々のこと。ベジタリアンにはいろいろな種類があるが、基本的にこうした人々の食事の中心は、果物や野菜、ナッツ、穀類、豆類、イモ類、海藻等である。栄養が偏るとして批判的な意見もあるが、十分にバランスの良い食事を摂取しているといえる。