食べる事・吸収する事・出す事、最も重要なのは?
私達の体は私達が食べたもので出来ています。口から取り入れる食べ物は、補給・同化・排泄の過程を経て私たちの体の一部となり、最終的には外に出て行きます。
- 食事をしてそれらを消化し……「補給」
- 栄養素を吸収して代謝を行い……「同化」
- それによって産生された体内の老廃物と食べ物のカス(残渣物)を排出する……「排泄」
これらの行為を毎日繰り返して日々を過ごしていますが、この3つのサイクルが1つでも狂えば、それが体調不良の症状となって現れます。
3つのサイクルはいずれも大切なものですが、特に注目したいのは「排泄」です。これはファスティングにも関わる大切な部分です。
スムーズな排泄の重要性
私たちは、日々の暮らしの中で様々なゴミを出しています。家庭内で出されるゴミ、車から排出される二酸化炭素、洗濯をすれば生活排水も出ます。こうしたものを適切に分別し処理を行うことによって、私たちは快適な暮らしを送ることができています。街中にゴミがあふれ、川や海の水は淀み、大気が汚染されたという環境で暮らすことが、どれほど健康に良くないことかは、子どもにでも理解できるでしょう。
では、私たちの体はどうでしょうか。
食べ物を摂取すればそれは消化されます。消化される際、または吸収されたものが体の中で利用される際、人間の体からも必ず産業廃棄物である「老廃物」が作り出されます。
例えば、たんぱく質はアミノ酸に分解されるときに有毒なアンモニアを発生させます。これは肝臓で無害な尿素に変えられますが、必ず尿中に「排泄」されなければなりません。
腸内に残った食べ物のカスは、体外に排泄されないと腸内で腐敗、発酵します。腐ったものが腸の中にあれば、腸内の環境が悪化し、大腸がんなどを引き起こしやすくなります。
加工食品がスムーズな排泄を困難にする
私達は、日々様々な食べ物を口に入れていますが、現代ではそのほとんどが加工された食品です。収穫された生のままの食品ではなく、調理の手が加わっていたり、保存や販促のために添加物処理されているものがほとんどですね。
実はこうした加熱処理、加工処理された食品は、消化に多大な時間とエネルギーを消耗します。私たちの体の生理機能や構造は、こうした食品を処理することを前提としていないからです。
食べ物に手を加えるという行為は、「火」や「化学物質を生み出す知能」を手に入れた人間しか行いません。調理や加工は、あくまでも「文化的所産」なのです。頭脳は著しく発達した人間ですが、その体の生物としての機能は実はさほど変化していません。この数十年での急激な現代科学発展に順応できるほど、私たちの体は進化していないのです。
こうした「加工された食品」は消化や吸収を完全に行うことが難しく、体内にたくさんの残留物(過剰な栄養分だけではなく、添加物やアルコールなどの毒素も含む)を生み出します。こうしたものが順調に排泄されればよいのですが、排泄される量よりも生み出される残留物のほうが多ければ、当然それは体の中に蓄積されていくことになります。
肥満の原因は、カロリーオーバーではなく残留物の蓄積
こうしたものは、皮下の脂肪組織や筋肉などに、「脂肪」という形で溜め込まれていきます。
「脂肪」は1gにつき9kcalの熱を産生します。エネルギー効率が良いので、体は飢餓に備えて余剰の栄養素を貯蔵しておくために、「脂肪」という形を選ぶのです。
肥満体系の人が様々な不調を抱えていたり、病気になりやすい事が指摘されていますが、それは脂肪の性質によるところもあります。人体にとって有害な物質(ダイオキシンなど)は脂肪に溶けやすいという性質を持っています。つまり、有害物質は脂肪に溶け込んだ形で体内に蓄積されてしまいます。さらに厄介なことに、脂肪に一度蓄積された有害物質は、体外に排出することがとても困難なのです。そのため、身体の脂肪細胞の割合が多い肥満体型の方は、正常体系の方に比べると有害物の蓄積量も多くなり、様々な不調や病気を発症しやすくなります。
しかもそうした有害な物質は「酸性」の性質を持ちます。血液は通常pH7.4で弱アルカリ性(※)であり、体が酸性に傾くと、疲れやすくなったり、免疫力が低下したり病気になりやすかったりと、様々な支障をきたします。そのためこれを中和するために体内組織は、アルカリ性である体内ミネラルを削ったり、水を溜め込むようになります。つまり「水太り」の状態です。
このように「排泄」がスムーズに行われない状態が、私たちの健康にとってどれほどの悪影響をもたらすかを理解することは難しいことではないでしょう。近年便秘に悩む方が増え、女性だけでなく男性や高齢者にとっても悩みの種となっていますが、この便秘にも私たちが考える以上のデメリットがあるのです。
体内の老廃物を絶えず取り除き、溜め込まないようにすることが、健康的なライフスタイルのスタート地点と言えるでしょう。
■Lesson3-2 まとめ■
- 私たちは生きるために毎日、補給・同化・排泄を行っている。このサイクルが問題なく行われることが健康的な生活には不可欠である。
- 食べ物を消化する時や吸収されたものが体の中で利用される時、人間の体からも必ず産業廃棄物である「老廃物」が作り出される。これは毎日スムーズに排泄される必要がある。
- たんぱく質はアミノ酸に分解される時、有毒なアンモニアが発生する。これは肝臓で無害な尿素に変えられるが、必ず尿中に「排泄」される必要がある。腸内に残った食べ物のカスは、体外に排泄されないと腸内で腐敗、発酵する。
- 現代の私たちの食事は、加熱処理、加工処理された食品が多く、これらは消化に多大な時間とエネルギーを消耗する。
- 体内で不要になった物や有害な物は、排泄されずにいると脂肪細胞に溜め込まれる。人体にとって有害な物質(ダイオキシンなど)も脂肪に溶けやすいという性質を持ち、有害物質は脂肪に溶け込んだ形で体内に蓄積される。
- 加工された食品や有害な物質は「酸性」の性質を持つ。体が酸性に傾くと、疲れやすくなったり、免疫力が低下したり病気になりやすかったりと、様々な支障をきたす。
※ 水素イオン濃度(pH)は、pH7が中性。7より上がアルカリ性で7より下が酸性。水素イオン(H+)を出すものを「酸」という。